好きって言えよ、バカ。




「……」



「…………」



観覧車に乗ってしばらく、静かな時間が過ぎていく。



お似合いの、カップル……



乗車直前に言われた言葉が頭の中をクルクルと駆け巡る。



そっか、周りからはそう見られてるんだ。



私たちは付き合っているわけではない。



私たちの関係にあえて名前をつけるとしたら、ただの同居人だ。



でも、そう言われて急に意識してしまう。



胸の鼓動がドキドキと大きく波を打ち始める。



やだ、聞こえちゃう。



観覧車という個室の中でふたりきり。



ドキドキの音が大きすぎて、蓮くんまで聞こえてしまいそう。



「なぁ、外見てみろ」



そう言われて、ずっと下を向いていたことに気づく。



ふっと窓ガラス越しに、外を見た。



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