ブラックサンタクロース
「お前、どうして……」
世界一守りたいヤツが
なんでまた
こんなとこに現れやがるんだよ……。
「電車に乗って」
いや、違う。
なぜここにきたと、聞いている。
「あ、心配しないでください。戸締まりならきちんと……んっ」
咄嗟に莉音の口を手で塞ぐ。
すぐ近くに上原がいたからだ。
「羽山さん、この子、知り合いですか?」
状況を理解したようで、俺が手を離すと
「オジさんお仕事お疲れ様」と笑った。
オジサン、か。
それはそれで複雑な気分だか……致し方ない。
やっぱりこいつは、バカではない。
きっといかなる環境にも表面上合わせるくらいのことは容易いのだろう。
とても自然に俺の親戚を振る舞いやがった。
「あー。もしかして、音楽祭見に来たんスか?」
上原が、莉音に問いかける。
んなわけねーだろ。
「はい」
(……は?)
「お前なぁ。こういうイベントにはチケットが必要なんだぞ」
世間知らずのお嬢さんめ。
「チケットならあります」
「!」
たしかに莉音が鞄から取り出したのは、音楽祭のチケットだった。それも、2枚。