いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~


「中庭に行くから、靴を持って」


そう言われて、私は玄関に上がると屈んで脱いだパンプスを手にすり。

いち君はこっちだよと案内し、ベンチシートのダイニングセットが置かれたリビングに入ると電気をつけた。

パッと視界が明るくなって、なんとなく安堵していれば、いち君が庭に続く窓を開け放つ。


「沙優、あれ、覚えてる?」


問われて、私は窓際に立ち淡いライトが照らす庭を眺めた。

そして──


「え……あの木って……」


私は驚き、固まった。

もうなくなったと思っていた思い出が、そこにそのまま残っていたのだ。


「マンションが建つ計画を聞いて、業者に頼んで移してもらったんだ」


タイムカプセルを埋め、目印にしたクリーム色の花が咲いた木が。


「タイムカプセルも?」

「もちろん」


庭に出ようと言われて、私は差し出された彼の手を握り木の前に立つ。


「この木はサネカズラっていうんだ。タイムカプセルを埋めた時は知らなかったんだけど、花言葉は【再会】なんだよ」


私たちの未来を約束するような花言葉に想いを馳せていると、いち君がウッドデッキに設置された棚からスコップを二つ持って来て、一つを私に手渡した。


「掘り起こそう」

「うん……」


私は頷くと、しゃがみ込んでいち君が教えてくれた辺りにスコップを突き立て土を掘っていく。

あまり深くには埋めてないと言っていた通り、すぐにステンレス製の箱が二つ出てきた。

< 236 / 252 >

この作品をシェア

pagetop