いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
「それね、昔、いち君のお母さんが教えてくれたの」
「母が?」
少し驚いた彼に、私は頷いた。
「いち君のお家の温室の花を貰った時、枯らしちゃうからって貰うのを断ったことがあって。そしたら、こんな風にドライフラワーにして飾るといいのよって」
見せてもらったドライフラワーは、瓶に入っているものだけでなく、リースになっていたり、ホルダーに入れて飾られているものもあった。
それを教わって以来、お祝い等で花をもらう機会があると、こうしてドライフラワーにして飾るようになったのだ。
今思えば、私はいち君のお母さんから素敵なことを何度か教わっている。
今日私が彼を招待したのも、まさにそれが関わっているのだから。
「そうか。確かに、温室や家の中には母お手製のドライフラワーが飾られてたな」
懐かしいな、と目を細めドライフラワーを眺めるいち君。
その瞳は思い出を慈しむようで、どこか寂しそうにも見えて、私は気持ちが沈まないように明るい声を出す。
「今日、予定を急に変えてごめんね」