恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
 「コーヒーと紅茶、どちらがいいですか?」

 「じゃあ、コーヒーをお願いします。」

 佐倉さんにはダイニングテーブルの所に座って待っていてもらうように言って、私はやかんに火をかける。
 コーヒーを入れる器具は、これまでに何度か使ったので勝手は分かっている。
 豆を取り出して手動式のミルで引く。豆が削られるゴリゴリという音がリズミカルで、昔からこの音が好きだ。
 沸いたやかんを火から下してフィルターにセットした粉の上にそっとかける。待つこと二十秒。コーヒーの良い香りが立ち上る。それから数回に分けてお湯を優しく回しかけた。

 「お待たせしました。ミルクとお砂糖、置いておきますね。」

 「ありがとう。このまま頂くから大丈夫よ。頂ます。」

 佐倉さんはコーヒーカップの持ち手をつまんで、口の近くまで持っていくとその香りを吸い込んだ。

 「いい香り…」

 そして一口飲んでから「まあっ!」と言って目を開いた。

 「どうですか?」
 
 「すごく美味しいわ!今まで飲んだコーヒーの中でもかなり上の方かもしれないわ。」

 「良かった!」

 彼女から貰った今日一番の褒め言葉に、胸の前で手を叩いた。

 「どこかで習ったの?こんなに上手にコーヒーを落とせるなんて、プロ並みですね。」

 「プロになれるほどではないんですが、コーヒーの淹れ方は父が教えてくれたんです。」

 「お父様が?」

 「はい。父は実家の近所で喫茶店をやってるんです。そのお店の手伝いを子どもの頃からしてまして。」

 「そうだったの。」
 
 それから私の幼少期の父との思い出話を佐倉さんと話した。

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