恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
 「葵、何か急な仕事でもあったのか?」

 いつもより少し硬めの口調で話す修平さん。

 「仕事なら職場か電話で話すでしょ。」

 「じゃあ、当然どうした?」

 「ん~。」

 彼女は修平さんと私を交互に見て、真顔のまま「急に来て悪かったわね。」と言った。
 彼女のその態度は敵意を感じるものではないのだけれど、何となく居心地が悪くなる。

 「これ。」

 彼女は手に持っていた紙袋を差し出した。

 「今日誕生日でしょ?だから渡そうと思って持って来たの。職場で渡そうかとも思ったんだけど、修平君、今日に限ってさっさと帰っちゃうから。」

 「そうだったんだ。ありがとな。」
 
 「どういたしまして。じゃ、お邪魔しました。」

 「あ、葵!」

 修平さんは踵を返した葵さんを引き止めた。それから私の方を振り返り少し早口で

 「杏奈。そろそろフライパンの中がやばくなるかも。」

 と言った。

 「あっ!」

 ハンバーグを蒸し焼きにしてる事をすっかり忘れていた。

 「先に戻ってて。俺は門の外まで葵を見送ってくるから。」

 「うん……。」

 二人のことが気になって一瞬躊躇ったけれど、今日のメインメニューをダメにしたくなくて急いでキッチンへ駆け戻った。
< 115 / 283 >

この作品をシェア

pagetop