恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
 修平さんが気付いてくれたお陰で、ハンバーグは無事だった。ホッと息をついた。
 ふっくらと焼けたハンバーグをそれぞれのお皿に盛り付けて、フライパンの中に残っている肉汁にケチャップとソースを入れて煮詰めていく。これが父直伝のハンバーグのレシピだ。

 出来上がったソースをハンバーグの上に掛けていると、修平さんが戻ってきた。

 「これ、さっき貰ったワイン。せっかくだから開けようか。」

 長細い紙袋の中から彼が取り出したのは赤ワインだった。

 さっき私をじっと見つめていた葵さんの顔が、脳裏をよぎる。

 「えっと…私、ワインはほとんど飲んだことなくて…」

 「そっか。それなら少しだけ飲んでみて、無理ならやめたらいいよ。」

 今日の主役である彼にそう勧められたら、断る選択肢なんてない。

 「じゃあちょっとだけ…。」

 私の返事を聞いた修平さんは心なしかウキウキとした足取りで、グラスを出してワインを開ける準備を始めた。


 「修平さん、お誕生日おめでとう。」

 「ありがとう、杏奈。」

 赤ワインの入ったグラスがカチンと音を立てて合わさった。
 修平さんはワイングラスに少し口を付けてから、すぐにハンバーグへと箸を伸ばした。
 私は固唾を呑んでそれを見ていた。

 ハンバーグを口に入れた次の瞬間

 「すげーうまいっ!!」

 大きな笑顔で彼がそう言ったので私は「良かった…」と胸を撫で下ろした。
 いつも丁寧な言葉で話す彼の、ちょっと砕けた口調に、それが心の底から言っているのが伝わってきて私はとても嬉しかった。

 「今まで食べたハンバーグの中でこれが一番美味しいよ。」

 「そんな、大げさだよ…」

 「いや、ほんとに。毎日食べたいくらいだ。っていうか、毎年誕生日に食べたいなぁ」

 最後の呟きに、心臓がドキンと跳ねあがった。

 『毎年』…て。
 私たちは今だけの繋がりで、修平さんの足が治って私が新しい部屋を見付けたら、もうなんの係わりもないんでしょう?
 
 こころの中でモヤモヤとした思いが湧き上がる。
 手に持っているワイングラスの中の赤い液体を見つめながら、ジッと考えていた。

 「杏奈?」

 そんな私を見て不思議に思ったのか、修平さんが私に呼びかけた。
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