恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
 「どうかした?」

 「う、ううん、なんでもないの。私にも飲めるかな、ってワインを見て考えてただけ。」

 「この赤ワインは口当たりが良くてフルーティだから、初心者の杏奈にも飲みやすいと思うよ。」
 
 そう勧められて、私はゆっくりとグラスに口を付けた。

 鼻から赤ワインの香りが抜ける。ベリー系の香りの中に少しスパイシーな香りも交じっている。飲み込むときに喉が熱くなって、『やっぱりお酒なんだな』とは思ったけど、軽い口当たりで思ったより飲みやすい。

 「美味しい、かも」

 「だろ?」

 それから修平さんはハンバーグ以外に箸を伸ばして、口にするたびに「これも美味しい」「この味も好きだな」と、一つ一つ褒めてくれる。気持ちが良いくらいパクパクと食べてくれる姿を見ていると、『頑張って作って良かった』と思えた。

 食事をしながらの会話も、とても楽しいものだった。
 修平さんが以前から手掛けている仕事が佳境に入ってきたとか、新しく設計しているお客様の所の猫が黒猫だけど、前足だけ靴下を履いているみたいだった、とか。
 私とアンジュのお散歩コースの開拓で盛り上がったり、月末に発売される本のことにも話が及んだ。
 少しも途切れることなく色々な話をした。

 普段から一緒に食事をする時、修平さんは私が気まずくならないようにと気付かって、色々と話をしてくれたり聞いてくれたりするけれど、今日はいつもより格段に会話が弾む。
 それはきっと、彼と食卓を囲んで一週間になることと、アルコールが混ざったことで私がいつもよりリラックス出来ているせいだろう。
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