恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!

 思わず目を見開いて息を呑んだ。
 部屋の境目越しに向かい合った彼は、黙ったままだ。

 なんで?どうして?
 もしかしてなにかあったの?

 疑問符が幾つも湧いてくるけど、どれも音にはならない。
 じっと彼の瞳を見つめていると、いつもとは違うことに気付く。
 寂しさを訴える子どもみたいに不安定な彼の瞳に、思わず手を伸ばした。

 「ごめん……」
 
 呟いた彼の言葉に伸ばした手が止まる。

 「もう寝てると思ってた…」

 微笑みながらそう言う彼の声はいつもの柔らかさはない。
 笑っている形を作っている彼の顔が、全然笑えてないことに、彼自身は気付いているのだろうか。

 どうしてそんなに寂しそうな瞳で笑うの?

 その瞳を見ているだけで私の胸は苦しくなっていく。
 伸ばしかけて止まっていた指先で、その頬にそっと触れた。
 彼の頬が温かくて、私の指先が冷えていたことに気付かされる。
 思わず口から思ったままの言葉がこぼれ落ちた。

 「そんなに寂しそうな目をして笑わないで」

 修平さんの目が大きく見開かれる。
 次の瞬間、彼は覆い被さるようにして私を抱きしめた。息が詰まるほど苦しいくらいに。
 
 それは『抱擁』というよりも、『縋りつく』と言った方が近かった。
 彼の腕が容赦なく私を強く抱きしめる。
 息苦しさを感じたけれど、それを我慢しながら彼の背中にそっと手を回した。
 そしてゆっくりと彼の背中を撫でた。
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