恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
祖母を亡くしてから二度目の誕生日。
俺は仕事をいつもより早く切り上げて帰りを急いだ。一年前の今日とは全然違う気持ちに自分でも驚いている。
帰宅すると、尻尾を振ったアンジュが俺を出迎える。いつもならアンジュと一緒に杏奈も出迎えてくれるのだけど、どうしたのだろう。不思議に思いながらリビングキッチンへと繋がるドアを開けると、キッチンに立った杏奈がじっと動かずじっと立っている。こちらに背を向けているから彼女の顔は見えない。
「杏奈?」
声を掛けると、俺が帰っているのに気付いていなかったようで、びっくりした顔をしていた。
喫茶店をやっている父親から教わったというハンバーグはとても美味しかった。美味しすぎてハンバーグのお替りをしてしまうほど。彼女はいつも「お料理は苦手」と言うけれど、全然そんなことはない。確かに、和食はまだまだ慣れないんだろうな、と思うこともあるけれど、味噌汁はきちんと出汁を取ってあって十分美味しいし、他の家庭料理も不味かったことはない。多分料理を教えてくれたという父親が上手すぎて、『上手』の基準が高くなりすぎているんじゃないか、と俺は密かに思っているのだ。
貰った赤ワインを飲みながら、にこにこと笑顔で話す杏奈はいつも以上に可愛い。
アルコールで上気した頬がピンク色に染まっている。丸くて大きな目が少しトロンとしているのが、いつになく色っぽい。
杏奈も美味しそうだ。
向かいに座る杏奈を眺めながらついそんなことを思ってしまう俺も少し酔っているのかもしれない。
お酒には割と強めの俺だけど、捻挫してからアルコールを取るのは今日が初めてだ。怪我が良くなるまではなるべく飲酒を控えるように、と医師に言われていたので、ここのところずっと同僚からの飲み会の誘いも断っていた。
医師の診断は建前で、本当は杏奈が待つ家に早く帰りたかったのと、アルコールを入れてしまったら自分に課した『制限』を守れるか自信がなかったから、といのが本当のところだった。