恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
 「それはそうと、杏ちゃんは瀧沢さんの足が完治したらどうするの?そもそも同居してのお手伝いも必要なさそうな感じだったわよね。」

 「そうなんですよ。実は私も新しい部屋を探してはいるんですけど…。」

 修平さんから告白された後、私もこのまま瀧沢家にお世話になっていては良くないような気がして、新しい住まいを探してはいる。
 火事に遭ったアパートの管理人さんが他で管理している物件を訊いてみたのだけど、空いている部屋のあるアパートは通勤するにはちょっと遠くて諦めた。同じ不動産会社の物件も私の希望に合うところは埋まってしまっていた。多分今が4月半ばで、ちょうど新年度の入れ替わりが終わった直後だからだろう。
 他の不動産会社に行ってみようと思っていることを、それとなく修平さんに報告した時に言われたことを千紗子さんに話す。

 「なかなか良いところがなくて。修平さんが、仕事関係の不動産会社に聞いてみてくれると言ってくれてます。引越し先が見つかり次第、瀧沢家を出ようと思ってはいるのですが…。」

 「彼は反対しなかったの?」

 「…反対は、しませんでした。でも残念そうにはしてました。」

 その時の修平さんの顔を思い出す。
 眉を下げて寂しそうな目をして、「杏奈がここを出ることを止める権利は今の俺にはないからね…」と言われて胸がズキリと痛んだ。彼に寂しい想いをしてほしくないと思っている私が、そんな顔をさせてしまう罪悪感が拭いきれない。

 「そうね、でももしお断りするなら一緒に住んでるの気まずいでしょうし。というより、杏ちゃんは自分に言い寄っている男性と二人で暮らしていて大丈夫なの?瀧沢さんが優しい方でも、男性でしょ?嫌なことはされてないの?」
 
 「えっと…私が嫌がるようなことはされたことはありません。恥ずかしくなることはよくあるんですけど…。」

 「今朝みたいな?」

 「そ、そうですね…。」

 またその話を持ち出されて頬が赤くなってくる。

 「そうね、あのレベルなら大丈夫か。」

 「あのレベルって……」

 「挨拶程度ってことよ。」

 「あれで挨拶………」

 黙り込んでしまった私を見た千紗子さんが「クスっ」と笑う。

 「もしお断りして居づらくなったらうちにおいでね。旦那さんにも少し話してあるからいつでも大丈夫よ。」

 「ありがとうございます…その時はお世話になります。」

 千紗子さんが優しい顔で微笑んでくれて、私たちの昼休憩は終わった。
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