恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!

 「夢みたいだ…嬉しいよ、杏奈。」

 少年のような大きな笑顔を見せる修平さんの頬がほんのりと赤い。
 彼は私を一度ギュッと強く抱きしめてから、一旦体を離し、自分の額を私の額にコツンと合わせた。
 
 「俺も杏奈のことが大好きだ。俺のことを好きになってくれてありがとう。杏奈のこと、大切にする。」

 近距離で見つめる彼の瞳が甘いのに穏やかだ。さっきまでの獰猛さは消えていて、私のことを愛おしそうに優しく見つめている。
 
 自分の気持ちを自分で理解したのは、その想いを口にした時だった私は、まだ状況について行けずに、呆然としていた。
 そんな私に、額を合わせたまま彼が尋ねた。

 「キスしても、いいかな?」

 「え?」

 「さっきは無理やり杏奈のファーストキスを奪ってごめん…。やり直しが効くなんて思ってはいないけど、俺との最初のキスを嫌な思い出にしてほしくないんだ………ダメ、かな?」

 『キスのやり直し』
 思ってもみないお願いに、顔がみるみるうちに真っ赤になっていく。
 こんな素敵な男性に、子犬みたいに首を傾げながらそんなお願いをされて、「ノー」と言える女の子がいたら見てみたい。
 かと言って素直に「イエス」と言うには経験不足の私は、自分が出来る唯一の肯定を態度で表す。

 彼見つめる瞳を、自分からそっと閉じた。

 閉ざされた視界の向こうから、修平さんの「ありがとう」という声が聞こえてすぐに、私は唇に温かくて柔らかいものを感じた。
 そっと重ね合わせただけの口づけなのに、唇同士の甘やかな触れ合いに心ときめく。高鳴る胸の音が、密着した彼には届いているかもしれない。
 長く続く口づけは、唇同士が触れ合うだけのものなのに、私の体はゆるゆると溶かされていった。
 
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