恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
いつのまに、この香りに落ち着きを覚えるようになったのだろうか。もう随分と馴染んだシトラスの香りに包まれている。
「杏奈、泣かないで。俺を見て。」
弱々しい声でそう乞われて、涙に濡れたままの顔を両手から少し上げると、困ったような、戸惑っているよな、そんな修平さんの瞳が私を見下ろしていた。
私の体を緩く囲ったその腕を、一つだけ解いて、その手で私の涙の跡を拭う。
「俺のこと、嫌いになったんじゃないの?」
悲しそうな瞳でそう問われて、私は勢いよく大きく頭を左右に振った。
「杏奈こと、泣かせたのに?」
今度は小さく横に振る。
「もう一度、聞かせて、杏奈。」
彼の瞳が懇願するように揺れる。
「お願い、杏奈。」
「すき、です。修平さんのことが好き。」
今度こそ、彼の目を見て、しっかりと気持ちを口にした。