恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!



 正直、自宅アパートを見に行くのが怖い。本当は一人でなんて行けそうにないくらい緊張している。
 でも私は一人じゃない。
 私のことを心配して手を差し伸べてくれる家族や先輩の顔を自転車を漕ぎながら思い浮かべた。
 自転車のペダルをグッと踏みしめた瞬間、この自転車を貸してくれた時の彼の顔が脳裏に走った。

 「気を付けて行っておいで。」

 そう言って、心配そうな顔で送り出してくれた彼のことを思い浮かべると、心の奥が温かくなるような、キュッと苦しくなるような、説明出来ない気持ちになる。
 
 「しっかりしなきゃ。」

 そう自分に言い聞かせるように呟いて、アパートまでの道のりを急いだ。 
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