恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!

 
 「そうそう、上手に出来てますよ。そのまま汁気が無くなるまで炒め煮にします。」

 「はい。」

 佐倉さんに教わっているのはひじき煮。今回の常備菜の一つだ。
 佐倉さんがここに来る時は大抵買い出しをしてきて、ここのキッチンで日持ちのする常備菜や、下拵えが必要な食材はすぐに使えるようにしてから冷蔵庫や冷凍庫に保存しておくらしい。
 食材は修平さんが前以てメールでお願いするものに加えて、佐倉さんがその日の値段や鮮度で決めて買ってくるとのことだった。
 確かに私がこの家に初めて来た時も冷蔵庫の中は食材とすぐに食べれるおかずで充実していて、それで簡単に夕飯を用意したんだった。
 あの時は緊張しすぎて、何を食べたかほとんど覚えていないけれど。
 
 「次は鯖の味噌煮を作りますね。」

 「お~!鯖の味噌煮は初めてです。」

 鯖が丸ごと一尾でお値打ちだったから、と佐倉さんは言いながら冷蔵庫から出してきた。

 「今日は私が捌きますから、杏奈さんは見ていて下さいね。」

 「はい!」



 佐倉さんに家事を教えて欲しいとお願いして、渋る彼女をなんとか説き伏せた後、私は彼女に「お客様扱いをやめてほしい」とお願いした。

 「ですが、宮野様は顧客である瀧沢様のお客様ですのでそういうわけには…」

 「違うんです!私は修平さんのお客様ではありません。ただの居候でお世話係なんです。」
 
 「お世話係?」

 前のめりになって力説する私に押されながら、佐倉さんは目を白黒させている。

 「はい、そうです。実は…」

 私はこの家にいる成り行きを簡単に説明した。聞きながら佐倉さんは、途中「まあ!大変!」とか「それは良かったですね。」と短い相槌を挟んだけれど、私が話終わるまで最後まで流れを遮るようなことは言わなかった。
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