溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

 善は急げとばかり、彼は外出の支度を始めた。
 来客のために着ていた白シャツとネイビーのスラックス姿から、開きの綺麗な黒のVネックニットと形のいいブルーデニム姿に変わっている。
 特別飾り立てているわけでもなく、装飾品は手首にある高級腕時計だけ。それでも目を引くのは、彼のスタイルがモデル並みだからだろう。

 百八十三センチの長身に、羨ましいほどの小顔。ソファに座って見惚れていると、彼は小さく唇で弧を引き、目元を細めて微笑んだ。


「咲は、そのままでいいからね」
「すみません。私、デートに行くような服は持っていなくて」
「大丈夫。気にしないでいいよ」

 彼は私を気遣って優しい言葉をかけると、手を取ってリビングを出た。



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