溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「どうぞソファに座って、寛いでください」
「ありがとうございます」
ホテルのコーナーにあるこの部屋は、リビングルームの大窓から望む眺望が印象的だ。
花火は見えないけれど、都心の夜が綺麗で目に眩い。
リビングルームだけでも広いのに、さらにベッドルームや水回りもあるとなると相当な広さと分かる。
人生初のスイートルームに落ち着いていられるはずもなく、興味のままに視線を泳がせてしまう。
「三藤さん、飲み物はなにがいいですか?」
「お水をください」
部屋の一角に設けられた冷蔵庫からペットボトルが出され、グラスと一緒に彼がローテーブルに置いた。
「あの、八神さんは八神グループの方なんですよね?」
「ええ。一族が代々経営していて、私も今は微力ながら携わっています」
「経営……されてるんですか!?」
「一応、副社長の肩書をいただいていますので」
そんな大物と一緒に過ごしているなんてと、私は驚きのあまり目を丸くしたまま動けなくなった。