溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
ほどなくして、ドアチャイムが鳴った。
彼は数着の浴衣を受け取り、六人掛けのダイニングテーブルに並べている。
「どれでもお好きなものを選んでください」
「わぁ……素敵な浴衣」
私が着ている浴衣は、一昨年購入したものだ。それも、ネット通販サイトからフリーサイズを選んだだけ。
今夏が終わったら、捨てるかリサイクルショップに売ろうと考えていたくらいだ。
だけど、八神さんが用意してくれたものは、どれも綺麗で。
「うちのブランドのものです。このホテルに季節柄置いている中から選んだので、三藤さんに気に入っていただけるものがあるかどうか」
「十分です! 八神さん、本当にありがとうございます!」
何度も頭を下げてお礼を言うと、彼がぷっと吹きだした。