溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「見つけられなかったんだね。だから、こんな時間になってしまったし、悲しくて悔しいんだよな?」
「はい……」
それに、八神さんに心配させてしまった。
方々を駆けまわって、冬空の下で待たせて……。
「迎えに来てくださって、待っていてくれてありがとうございました」
「いいんだよ。当然のことをしたまでだから。それより、大丈夫なのか?」
「わかりません。明日、上司や関係各所に報告をしてからじゃないと……」
「そうじゃない、咲を心配してるんだ。今にも泣きそうで、放っておけない」
大きな手でそっと髪を撫でられた。
「咲の心が折れてしまうのは、望まないよ。俺のことは気にしないでいいから、今夜は早く休んで」
彼はそう言い残すと、ソファから腰を上げて書斎に入ってしまった。