溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
――翌日、金曜。
総務部長に書類の所在が分からないと報告すると、眉根を深く寄せた表情で、自席に戻るようにだけ返された。
そして、二時間ほど経つと、部長に呼びだされてしまい、打ち合わせ室で対面に腰かけた。
「紛失、ということですか?」
「……わかりません。私が受け取り、畑中さんにファイリングを依頼しましたが、そこから先の経緯は不明で……私の管理不足です」
「でも、年明け前の早朝に、君が契約書のキャビネットを開けて、探し物をしていたと報告が上がっているんだよ。君が持ち出したんじゃないのか?」
「違います。あの時は、別件で調べものをしていたまでです」
「……うーん、参ったねぇ」
自社の黒ペンで、経緯などをメモしていた部長は、私をじっと見つめてくる。
「現状の契約については問題はないと思いますが……三藤さんはいつも真面目に頑張ってくれているし、できるだけ尽力するから、報告を待ってください」
「ご迷惑をおかけします……」