溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

「まとめ髪が崩れてしまいましたね。……まぁ、ちょうどいい。せっかくですから、着替える前にシャワーを使ってください。お酒もかかっているから気持ち悪いでしょうし」
「いえ、それには及びません……っ!!」

 私の肩にすんなり手を回し、浴室へ連れて行く彼は、遠慮しないでと言うばかりだ。


「浴衣を用意していただいただけで、十分ですよ」
「八神の浴衣に袖を通していただくなら、汗を流してからの方が私も嬉しいので。はい、これがタオル。アメニティはどれでも好きなだけどうぞ」

 ふかふかで真っ白なタオルを手渡した彼は、洗面室のドアを閉じて戻ってしまった。


 確かに、帰ったらすぐにシャワーを浴びたいくらいだ。
 汗ばんだりお酒をかけられたりしたせいで、いい匂いがする女子とは言い難い。

 このまま彼の隣で過ごすのも嫌だし、八神の高級浴衣に袖を通すのも悪い気がして、ありがたくシャワーを借りることにした。


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