溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「おかえりなさい。……あっ、すみません。お夕飯の支度」
「しなくていい。それより、なにがあった? 昨日のことでまたなにか問題が起きたか?」
小さく頷き、部長と話したことや今日一日のことを零す。
担当営業の社員に謝っても謝りきれなかったと話したら、彼は優しく包み込むように抱きしめてきて。
「咲ができることはしたんだから、もう大丈夫だよ。俺は、総務部長とは面識はないけど、咲が日頃真面目に働いているのを評価してくれているわけだし、あまり気に病まないほうがいい」
頷きもせずに黙っていると、私の背中をあやすように数回撫で、髪にそっとキスが落とされて。
「週末は、咲が元気になれるようにしよう。行きたいところに連れて行くし、やりたいことをしよう」
「……でも、お仕事は? 八神さんも最近すごく忙しくされているはずですよね?」
「俺は、仕事を家庭に持ち込まない主義だから。前に話したの、覚えてないのか?」
いたずらに微笑んだ彼は、まずは腹ごしらえをしようと言って、ホテルのレストランからルームサービスを取ってくれた。