溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

「咲は本当に文具が好きなんだね」
「はい、大好きですよ。幼い時からずっと好きで、親も呆れるくらい収集したりして」
「そうか、じゃあStationiaで働けるのは、咲にとっては最高なんだろうなぁ」

 渋谷の街を手を繋いで歩く間、興奮した私が文具コーナーで力説したのを、彼は思い出したようで。


「あ、今ちょっと笑いましたよね?」
「好きなものがあるのはいいなと思っただけだけど?」
「でも、今の八神さんの笑顔は、ちょっと珍しいものを見たような感じでしたよ?」
「そんなことないって」

 なんて言い合いをするのも、楽しいと感じる。

 だけど、八神さんの整った容姿のせいで、行き交う女性たちの視線が集まって仕方ない。


「どこかお店に入りましょう! 喉が渇きませんか?」
「うん、いいよ。行こうか」

 彼の隣に私がいるのは釣り合わない気がして、隠れたくなったなんて言えない。
 私なんて……って、口にすると、彼は少し怪訝な表情をするからだ。


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