溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
近隣のダイニングカフェに入り、ランチセットを注文した。
周りにいる来店客の中には、恋人同士の姿もある。
今までの私なら、確実に女友達と会うだけで満足していただろうなぁ。そして、来店した恋人同士の姿を見ては、自分には縁遠いことと諦めたりして。
「デートって、こういう感じなんですね」
「本当に、咲って……」
感動していたら、またしても彼に笑われてしまった。
しかも、軽く握った手を口元にかざしている彼の麗しさに、ドキドキする心の奥を隠す。
「だ、だって、まともにお付き合いしたことないんだから、仕方ないじゃないですかっ」
「つまり、俺を最初の彼氏にしてくれるってこと?」
「ちっ、違いますっ! 私はまだ八神さんを信用したわけじゃ……」
でも、このところ彼には助けられている。
落ち込んでいたら自然と隣に寄り添ってくれて、愚痴に近い泣き言も嫌な顔をせず聞いてくれた。
素敵な訪問着までプレゼントしてくれたり、私のいいところをたくさん教えてくれたり……。