溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

―――――
―――



 三月に入り、年度末を迎えた社内は、いつになく騒然としている。


「なにかあったんですか?」
「三藤さん、知らないの?」

 出社して自席に着き、隣にいる先輩社員に尋ねたら、逆にきょとんとされてしまった。


「大口契約の件、来期からは取引を四分の一にするって先方が決めたらしくて」
「えっ!? 本当ですか!?」

 私のせいだ。
 やっぱり機密文書の紛失は、大きな痛手を生んでしまったようで、どうしたらいいか必死で考えた。

 でも、営業職の経験もないから出向くこともできないし、私がいくら謝っても、なにも変わることはないだろう。


「……どうしよう」

 来期になったら、他の部署に異動させられそうだ。
 それならそれで仕事に慣れるように努力するしかないのだけど……今回の件は、行く先々で上司の耳に入るんだろうな。


< 176 / 210 >

この作品をシェア

pagetop