溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
ランチも、美味しく感じない。
こういう時に奈緒美がいてくれたら、背中を思い切り叩いて励ましてくれたかなぁ。
「あっ、いたいた。探したよ、三藤さん!」
「部長、いかがされましたか?」
社食の片隅にいた私を見つけるなり、慌ただしく向かってきた部長は随分と息が荒い。
「いい話だ。早く来てくれないか?」
「えっ、あのっ」
「いいから早く!」
ついさっきまでは、私と同じくらい暗い表情をしていたはずなのに、部長は生き返ったように明るさを取り戻している。
強制的に連れ出された私は、その背を追った。
「どちらへ向かわれるんですか?」
「特別応接室だよ。……さすが日頃真面目に働いている三藤さんは、やることが違うね」
「えっ?」
部長がやたら褒めてくれるので、思い当たる節のない私は首をひねるばかり。
エレベーターで社長室と同じフロアにある特別応接室の前に到着すると、中から明るい話し声が漏れ聞こえてきた。