溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

「失礼いたします。三藤をお連れしました」

 先に入った部長は、誰かに私の到着を告げた。


「あ、あのっ……総務部の三藤です」

 後に続いて私も足を踏み入れると、そこにはお見合い以来で顔を合わせた会長と専務、営業統括部長に企画部長など、錚々たる面々が揃っていて。


「突然呼びたてて申し訳ない。どうしても君と話がしたくてね」

 先日の書類紛失の件で、役員に叱られるのではなさそうだと、すぐにわかった。


 Stationiaの役員が並んで座るその上座には、八神さんがいたからだ。


「三藤さん、こんにちは」
「お、お世話になっております……」

 疑問だらけで動揺する私に、彼は和やかな挨拶を交わした。


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