溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「今後の八神グループのためにもなるからだよ。伝統ばかりでは、受け入れてくれる層は限られてる。だからって、それまでの歴史を覆すようなことはしたくない。うちにもこういう新しいものがあるって見せるためには、他の企業の協力が必要不可欠だったんだ。それに――」
大企業の副社長、そして歴史ある呉服店の代表として、彼が先々の経営を見据えるのは分かる。
でも、やっぱりそれだけじゃ腑に落ちなくて、彼の言葉を待った。
「一生懸命な咲を見ていたら、俺ももっと視野を広げないとなぁって刺激を受けたしね」
「わ、私は別に普通に働いているだけで」
「咲のためなら、なんでもしたいんだよ。咲のために尽くしたいんだ」
真剣なまなざしと、淀みのない声色で想いを告げられ、ずっと頑なだった私の心は、一気に彼に傾いた。