溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

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「えっ、ここを出るんですか!?」

 八神さんが突然引越しをすると言ってきたのは、三月中旬の土曜のこと。
 年度末で帰宅が遅くなる日が多く、それでもきちんとこの部屋に帰ってきて、朝起きると隣に眠っていた彼と、数日ぶりにまともに会話ができると思っていたのに。


「それって、つまり……あのっ」

 八神さんと一緒に生活する時間が、終わるってこと?
 朝食を済ませ、ダイニングテーブルの対面に座る私に、彼はゆっくり頷くだけ。


「だから、咲も荷物をまとめて動けるように、時間を作って片付けをしておいてね」
「いつ出るんですか?」
「うーん、今日あたりそれを決めようと思ってて。一緒に出かけられる?」
「はい……大丈夫です」

 春の日差しを感じられるようになってきて、彼とお花見をしたいとか、遠出をしたいとか……いろいろ考えていたのに。


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