溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

「本当に、私の話を聞いたのがきっかけなんですか?」
「そうだよ。あんなに熱心に文具のことを話されたら、興味が湧いてね」

 ネクタイを緩めながら話す彼は、スーツジャケットを脱いでソファの背に置いた。
 ベスト姿の八神さんは、色気がある。着物を着ている時とはまた違う、夜が似合うような雰囲気だ。

 思わず見惚れそうになってしまい、私は話の続きを切り出す。


「……じゃあ、どうして二年も先まで契約を結ぼうとしてくれたんですか? まだ何も話が進展していないうちから、そんな申し出をされるなんて異例だって、うちの上層部も驚いていたじゃないですか」

 普通はどんな商品を作るか、どのくらいの価格帯で流通させるかなど、細かに決めた上で契約額や期間が決定するはずだ。途中で両社の意向がかみ合わなくなる場合だって、今まで少なからずあったと聞かされてきた。

 それなのに、どうして?
 私が話したからって、わざわざ上層部に名前を出してくれたのは……。


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