溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
彼の想いを聞いても、まだ返事をしていない私は足踏み状態だ。
八神さんがどんな人なのか、少しずつ分かってきて、改めて惹かれるようになってきたところなのに、別々に過ごす時間が訪れるのは寂しい。
「いい天気だなぁ」
「そう、ですね……」
「どうした? 俺と離れて暮らすのがそんなに寂しい?」
運転席から私の表情を横目で見た彼は、少しも寂しそうじゃない。
今日まで半年一緒に暮らしてきたのに……離れて過ごしても平気なの?って聞きたくても、彼はもう新しい生活をするって決めているのだろう。
口数の少ない私の様子を察してか、彼が世間話をしてくれた。会社でこんなことがあったとか、彼の祖父と父親は相変わらず私のことを気にかけているとか……。
「まったく、親父が誰に似て気が早いのかと思ってたけど、じいさんからの血筋だな」
そう言う八神さんだって似ている気がする。
この半年のことを思い出して心の中で相槌を打っていたら、いつの間にか広尾の街並みが車窓に流れていた。