溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「よし、到着。ちょっと連絡入れるから待ってて」
どこかのビルの地下駐車場に車を停めた八神さんは、携帯を手に運転席から出た。
フロントガラス越しに、誰かと話している彼を見つめる。
グレンチェック柄のパンツに、ネイビーの薄手のニットを合わせ、その中に白いシャツを着ている彼は、今日もモデルのようだ。
適当に捲られた袖から覗く、筋が浮いた腕が男らしい。携帯を持つ手も大きくて、鼻筋の通った横顔はいつまでも眺めていられる。
「咲、おいで」
通話を終え、後部座席から私のバッグを持ち出した彼は、車をロックしてエレベーターの方へと向かっていく。
「どこにいくんですか?」
「すぐにわかると思うよ」
答えを教えてくれない彼の背に、私は首を傾げながら追いついた。
「素敵なレストランとか? あ、八神さんの着物が置いてあるお店ですか?」
「あははは、それも楽しそうだね。また咲に着物を見立ててあげたいしね」
「い、今のはおねだりじゃないですよ!?」
勘違いされてしまったと慌てて言い直すと、彼は笑ってエレベーターに乗り込んだ。