溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

 シャワーを浴び、高級ブランドの化粧水や乳液などを初めて使った肌が生き生きとしている。
 ドライヤーで乾かした髪は、いつもよりも上質なシャンプーの効果で、格段に手触りがいい。


 リビングへ戻ったら、改めてお礼を言おうとしたのに、肝心の彼の姿はなかった。


「八神さん」

 呼びかけてみても、返事はない。
 急用でも入ったのか、それとも、さっきの接待に戻るよう連絡が来たのか……。
 だけど、こんな贅沢な部屋の支払いができるはずもなく、一瞬にして青ざめた私はガウンを着た身体を自分の両腕で抱いた。

 用意された浴衣だって、いくらなのか聞いてもいないし……。


「――今日は無理だよ。大切な案件が入ったんだ。だから、また今度日を改めて」

 どうしたらいいのか考えていると、彼が誰かと親しい口調で話しながら、リビングの別のドアから入ってきた。


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