溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「すみません、ちょっと連絡があったもので」
Yシャツのボタンが外され、露わになった彼の胸元が目に入り、慌てて背を向けてソファに座った。
だけど、それも束の間で、隣に来た彼が手を差し出している。
「脱いだ浴衣、貸してください」
戸惑っている私に気づいていないのか、八神さんは奪うようにして浴衣を手にした。
「帰ってからクリーニングするにしても、畳んでおいた方がいいでしょう」
和装を扱う企業を経営しているだけあって、手慣れた様子でコンパクトに畳まれた浴衣が戻ってきた。
「あの、お仕事があるのでしたら、私ももう失礼するので」
「大丈夫です。月曜の朝まではオフですから、お気遣いなく」
八神さんはにこやかに微笑み、私の隣に腰かけた。
すっぴんを見られるのが、こんなに恥ずかしくて気まずいものだと思い知ったのも、今夜が初めてだ。