溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
梅雨が明け、銀座の呉服店へ視察に向かう。
いつもは本店である新宿の店に顔を出すことが多いけれど、老舗デパートの【東央百貨店】にも商品を置いているから、利便の都合で銀座店を贔屓にしてくれる顧客に、たまには顔を見せないと具合が悪いのだ。
仕事中、和装で出向く日は、店頭に立つことがある時。
プライベートでも着るくらい和装は好んでいて、着回しには困らないことは、この家に生まれた運命に感謝できる。
「社長、お疲れ様です」
「お疲れ様。どうですか、季節も変わってきていますが」
銀座店の店長やマネージャーと打ち合わせをして、課題を聞く。
同じ着物を扱っていても、地域が変われば客層も違うし、街に合わせた商品展開が必要だからだ。
銀座店には、もうワンランク高級な品物を置くことにした。
新宿本店は、上顧客と話す時間をもっとゆっくり取れるよう、店内の改装も考えなくてはいけない。別棟に特別サロンなんかを作ってもよさそうだ。