溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

 ――八月。
 秋なんて一生来ないんじゃないかと思わせられるほどの灼熱の日々が続いている。

 今日は、土曜の休みを返上して、協賛している花火大会に行く。
 花火自体は好きだし、浴衣を着てゆっくり過ごせたら最高だと思う。

 だけど、毎年この花火大会は仕事に使う場で、楽しむどころか気を使う時間だ。
 必然的に部下も休日返上で来なくてはいけないし、家族がいる社員には少し申し訳なくも思う。


「本年も、多大なご支援をありがとうございます」

 早い時間に協賛企業用の特別観覧席に座っていると、大会の実行委員長が丁寧に挨拶に来てくれた。


「こちらこそ、毎年楽しみにしておりますので、どうぞ今後ともどうぞよろしくお願いいたします」

 できれば、プライベートで来てみたいものだ。
 好きな女と肩を寄せて空を見上げて、酒を飲みながら過ごせるだけでいい。

 そんな他愛ない恋人同士の時間が過ごせないのは、仕事のせいが半分、悪評のせいが半分だ。

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