溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

「あの、八神さんは八神グループの方なんですよね?」
「ええ。一族が代々経営していて、私も今は微力ながら携わっています」
「経営……されてるんですか!?」
「一応、副社長の肩書をいただいていますので」

 そう答えると、彼女は目が落ちそうなほど驚いた。

 そして、俺は、俺の素性を知らなかったのかと察すると同時に、好感を持った。


 こんな女性に出会ったのは、いつぶりだろう。
 出会っても名乗った瞬間に悪評のせいで敬遠されたり、恋人を作らずにいると、親は見合いを進めてきたり。

 だけど、彼女は肩書も家柄も知らない俺を、ひとりの男として見ていてくれたのかもしれない。

 ちょっとしたことで恥ずかしそうにしたり、心から喜んでくれたり……。
 純粋な子だと分かって、一層興味がわいた。


 ――それなのに、彼女はひと晩のうちに、俺の腕の中からするりと抜けだして消えてしまった。

 まるで、夢だったかのように。

 彼女とベッドで眠り、翌朝を迎えた俺は、またひとりきりになっていた。

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