溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

 もう少し彼女のことを知りたかった。

 勤務先や、酔った姿、やわらかな唇と清らかそうな裸を知っても、肝心の彼女の気持ちは分からなくて。


「あー……マジで、なんなのこれ」

 ひとり、キングサイズのベッドに横たわりながら呟く。


 今まで遊んだ女にはいないタイプだ。
 付き合った恋人とも違う。

 他人なのに居心地がよかった。
 抱きしめたら、柔らかくて小さくて、俺より少し体温が低くて。


「三藤 咲か」

 なんとしてでも、また会ってやる。
 俺のことを忘れたなんて言わせないし、彼女の耳に悪評が入る前に手に入れたい。


 雨の日に何度も見かけた彼女に、いつしか瞳が恋をして、心まで蝕まれていたのだと気づかされた。

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