溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
だからと言って、ここに長居するわけにはいかなくて。
「なんとかして帰ります」
「泊まっていきなさい」
「えっ!? と、泊まってって、あの」
私は彼と初対面の感覚は薄いけれど、彼にとっては、間違いなく今夜初めて会った相手だ。
半年ほど前から片想いをしてきたから、こうして話せただけでも大前進。それだけで十分な収穫だったと思うのに……。
「ベッドルームは二部屋あるので、ご心配なく」
「っ……そういう意味ではなく」
「そういう意味、とは?」
初めて八神さんの悪戯な微笑みが向けられ、一瞬にして射抜かれてしまった。
目が眩みそうなほどの衝撃に、ソファに背を預けてもたれる。
だけど、隣にいる彼は何食わぬ素振りで、私を見つめるばかりだ。