溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「とりあえずゆっくりしていてください。私もシャワーを浴びてきます」
「はい……」
……って、待って!
八神さんも私と同じガウンを着て、出てくるってことだよね?
それはちょっと刺激が……考えただけで逆上せてしまいそうだ。
あっ、でもこの隙に帰ることだってできる。
せっかく浴衣を畳んでもらったけど、着付けならできるし問題はない。
ここまで気を使ってもらったのに申し訳ないけれど、泊まるなんて考えてなかったから心の準備が……。
「あ、そうそう」
「っ、はい、なんでしょう」
洗面室に向かっていた彼が、思い出したように私に声をかける。
「私がシャワーを浴びている間に、帰ったりしないように。いいですね?」
私の頭の中が見えているのか、彼は釘を刺してから再び背を向けた。