溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
ただソファに座っているだけなのに、ドキドキして仕方ない。
いずれ、八神さんも隣に座るのかな……。
ダイニングチェアに並べられた浴衣を眺めていたら、少しは落ち着きを取り戻せるかと思ったけれど、結局彼のことばかり考えてしまう。
ガウン姿で戻ってくるとしたら、さっきよりも大胆に胸元が開けられているかもしれない。
そんな彼と目を合わせて話すなんて、きっと無理だ。
それに、今夜はゆっくり眠れないだろう。
別の部屋で横になるとしても、彼の生活に私がいる時点でことごとく現実味がない。
やっぱり、帰ろうかな……。
怒られるかもしれないけど、彼とはそもそも接点がなかったわけだし、お礼のメモを残しておけば、彼も納得してくれるだろう。
「どうしたの?」
メモとペンを広いリビングの中を探していたら、ガウンを羽織った彼が戻ってきてしまった。
予想通り、濡れた髪をタオルで拭く仕草すら特別なものに思える。