溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「メモを探してました」
「これで良ければ使ってください」
彼は部屋の片隅にある飾り棚の上から、ホテル名の入ったメモとペンを差し出した。
「もしかして、私にお礼でも残して、帰るつもりでしたか?」
「っ!! な、なんでそれを」
八神さんは私が考えていることを言い当ててくる。
「そんなところではないかと、予想したまでです」
ふっと表情を崩され、湯上がりの彼の色気に当てられる。
めまいを起こしそうなほどの威力に、ダイニングチェアに座り直したら、彼に手を引かれてしまった。
「こっちに座って話しましょう」
「っ、あのっ」
ソファとダイニングテーブルで離れて座ろうと思ったのに、それも見透かされたようだ。