溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

「三藤さん、大丈夫?」
「はい、大丈夫です……すみません、やっぱり飲みすぎてしまいました」
「謝らなくていいよ、私が付き合わせたんですから。それに、楽しかったです」

 ふわぁっと身体の力が抜け、雲の上に座っているような感覚だ。
 座り心地のいいソファの背もたれに身体を預けたら、動けなくなってしまった。


「お水、飲みますか?」
「すみません」

 八神さんはお酒が強いようだ。
 私よりもずっと早いピッチで飲んでいたし、量も倍以上だったはずなのに、しゃきっとしている。

 さすが、完璧な人は乱れることがないんだろうなぁ。

 ワインを飲みながら聞いた彼の人となりを振り返る。
 先に聞いていた通り、八神グループ本家の跡取で副社長。三十一歳、身長は百八十三センチ。
 毎日忙しくしている彼がホテル住まいを選んだのは、日々にマンネリしないためらしい。


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