溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
ワインを飲む間、彼の色気でまともに直視できなかったけれど、一度見たら忘れられない姿は酔った頭に浮かんだままだ。
「そろそろ寝ましょうか」
「そうですね……酔ってしまったので、帰れなくて申し訳ないのですが」
「あはは、いいよ。本当、君って真面目だね」
先に彼がソファから立ち上がって、私も続こうとしたら身体が大きく揺れた。
やわらかく受け止めた背もたれの高さから、目の前に立っている八神さんを見上げる。
「……すみません、本当に」
「力が入らなくなるタイプなんですね」
私の酔い癖を見抜いた彼は、冷静かつ妖艶な眼差しで右手を差し出した。
「掴まるか、私が抱き上げて運ぶか。どちらがお望みですか?」
斜め上の問いかけに息を飲む。
答えなんてすぐに返せるはずもなく、私はまた俯いた。