溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「私の気分は、後者ですが」
「っ!?」
一瞬にして浮いた私の身体は、八神さんのしっかりとした腕の中に納まっている。
直視できなかった姿が目も逸らせないほどの距離にある上に、彼の体温が直接伝わってきて、途轍もなく恥ずかしい。
ドキドキしてなにも言えずにいると、彼はリビングを後にして部屋の中を歩き出した。
「ご迷惑をおかけします……」
「いえいえ。転んで怪我をしてしまうよりずっといいですから」
止めどなく鳴る鼓動の音量を調整できるはずもなく、彼の顔を時折盗み見ては、整いすぎている彼の顔立ちにハッとさせられる。
これを今夜のうちに何度繰り返すのかと思うほど、終わりのないときめきに胸の奥は焦がれてばかりだ。