溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「他の飲み物は、そこの冷蔵庫に入っているのを好きに飲んでください」
「ありがとうございます」
飲みかけのワインを手に戻ってきた彼に、お礼のために頭を下げる。
躊躇なく隣に座った彼との距離に慣れなくて、意識的にひとり分空けて座り直した。
「気分は悪くないですか?」
「はい」
「眠れそう?」
酔っている身体で横になれば、数分で寝つけるとは思うけれど、今夜は勝手が違う。
ずっと好きだった彼の住まいに泊まっていて、さっきはここまで抱き上げられて。
ふたりきりになって、まだ四時間くらいだけど、ほんの少し距離が縮まったような気もして……それが嬉しくて。
「もうちょっと今夜を楽しみたいなって思っているんだけど……ダメかな」
「いいですよ」
「よかった」
不意に彼の手が私の髪を撫で、間接照明の中でやわらかく微笑みを向けてきた。