溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

 彼のことはまだ表面的なことしか知らない。
 どういう性格で、どんな人に囲まれて過ごしているのかとか、好き嫌いとか。
 好きなタイプも、過去の恋も、今のことも。


 だけど、きっとなにを知っても私が片想いをしていることには変わらないんだろうな。


「三藤さんは、今恋人はいないんですね?」
「どうしてわかるんですか!?」

 しかも、八神さんは私が話していないことを言い当ててばかり。
 人生経験の違いなのか、恋愛経験値が豊富なのか……私が世間知らずなだけ?


「大切な人がいたら、他の男の部屋に泊まらないでしょうから」
「あ……仰る通りです」

 言われてみればそれもそうだ。
 それに、そんな相手がいたら、会社の集まりじゃなくて個人的に花火大会に行っていたはず。

 素直に認めた私に、彼は優しいまなざしを向けているけれど、まさか半年前から想いを寄せられているなんて知らないんだろうな。


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