溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

「あの……」

 見つめられても困るのだ。
 こんな時間の過ごし方を、私は知らない。

 好きな人の部屋で、ふたりきり。
 それもベッドに並んで座るという、初めてのシチュエーション。
 だから、つい話しかけてしまう。なにか話題を振ってくれないかと、八神さんに主導権を渡すつもりで。


「三藤さんは、男と外泊したことないの?」
「えっ!?」
「あぁ、失礼。さすがに踏み込みすぎですよね」

 本当にどうして言い当ててくるんだろう。まるで私を知っているかのようだ。


「どうして、わかるんですか? 私のことなにも知らないはずなのに」
「確かにあなたのことはよく知りません。でも、なんとなく見ていればわかることもありますよ。恋人がいないことも、あまり男慣れしてないんだろうなぁっていうのも」

 終始ぎこちない私の様子から、彼が察していたと気づかされ、ますます恥ずかしくなってきた。


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