溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

「こういう時、どうしていいのかわかんないって顔してる」
「……言い当てるのやめてください」

 彼がくすっと笑って、からかってくる。
 会話の端々で彼と目を合わせる程度だった私は、時間を追うごとに増していく彼の色気に当てられて、俯いてばかり。


「言い当てたつもりはないですよ。三藤さんが否定しないせいです」

 それもそうだけど……片想いをしている人に嘘はつきたくなくて。


「教えてあげましょうか。……こういう時間の過ごし方」

 間接照明のアンバーが、彼の声色まで色づけているよう。
 ひとり分空けていた距離に大きな手を突いた彼の影が、私を覆っていく。


「こっち、見て」

 言われるままにゆっくりと顔を上げたら、男性の妖しさというものを初めて目の当たりにした。


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