溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
瞳に熱を感じ、まつ毛が作る小さな影に少しの危うさがある。
私の頬を包むように添えられた大きな手は、指を髪に差し込み、その先で耳の形をなぞった。
「んっ……」
漏れた声は自分でも聞いたことのない色を孕んでいて、慌てて抑える。
「もう少し、飲みませんか? 私ひとりでは飲みきれないので」
ただ見つめられて、頬や耳に触れられただけでもどかしくなる。
こんな感覚は初めてだったのに、八神さんへの恋心と通じていることだけは分かって、恥ずかしくなった。
もう見つめ合うなんてできない。
だけど、彼にいつか気持ちを知ってほしい。
今じゃなくていいから……。
お酒の力を借りないと眠れそうにない。
私はグラスを受け取って、飲みかけをひと息に流し込んだ。